計算化学に強い北大へ テニュアポストの重要性

インタビュー 03 前田 理 教授 の場合
北海道大学 大学院理学研究院 化学部門

前田 理
教授MAEDA Satoshi

研究課題
  • 反応経路自動探索法の開発と様々な化学現象への応用
採用年度 2012年度
恩師に勧められて応募
審査当日も冷静に対応

北大テニュアトラックに応募する以前は、京都大学の次世代研究者育成支援事業「白眉プロジェクト」に所属していました。こちらも若手研究者を対象に最長5年間の研究活動に没頭できる良い研究環境でしたが、採用期間後のテニュア職に就ける確約はなく、東北大学時代のスーパーバイザーの先生から北大テニュアトラック事業を勧められ、白眉プロジェクトの任期2年目でこちらの公募にチャレンジしました。自分が学生の頃から面識があり、研究分野が近い武次徹也先生がメンターになってくださるという条件も応募の後押しになったと思います。

二次審査のプレゼンテーションは「英語でやるように」とその場で言われ、一瞬応募者全員が驚きましたが、1年間在籍していたアメリカのEmory大学や白眉プロジェクトでも英語でスライドを作る習慣がついていましたので、なんとか事なきを得たような気がします。もしかするとその場で動揺しないメンタルも評価に入っていたのかもしれません。

弾みのついたスタートアップ
大型国際研究拠点も継続中

採用後は研究活動以外にも授業を持つ教育や国際シンポジウムの企画など、レンジの広い課題が与えられました。特にシンポジウムの企画は教授クラスになってからやるもの、というイメージがありましたので、自分が主催者となったのはこのときが初めてでした。現代の研究者に求められる要素、教育やアウトリーチの重要性を全般的に教わったという印象です。

肝心の研究活動のほうも、採用直後のスタートアップに潤沢な予算を与えていただき、研究に必要な機材を揃えられたことは大きな弾みになりました。白眉時代に生まれた研究アイデアをさらに発展させて、2年後にはJST-CREST 「新機能創出を目指した分子技術の構築」が採択されました。この成果を得てテニュアトラック期間を終えたのちは、大学院理学研究院の准教授、教授となり、現在は2018年から10年間続いている大型の国際研究拠点「化学反応創成研究拠点」、通称WPI-ICReDD(アイクレッド)で拠点長を務めています。 テニュアトラック期間は白眉時代と同じように自由でオープンな雰囲気のなか、教員同士の交流も進みました。同期の瀧川一学先生にはWPI-ICReDDメンバーとしても引き続き力を貸してもらっています。

部局型・横断型の利点を融合
優秀な人材が居続けられる環境を

いま自分が大型プロジェクトを動かし下を育てる立場になると、各自が研究に集中できる環境と異分野交流が進む環境の両方が大切だと考えるようになりました。テニュアトラック制度も「部局型」と「旧総合型」を融合させたハイブリッド型の選択肢があってもいいのではないかと感じています。

本事業の助教時代は前向きな自立意識を周囲も自分も持っており、その空気感もあって比較的シニアの方々が対象となるJST-CRESTにも躊躇することなくトライできたように思います。ただ、日本のテニュアトラックのテニュアポストは准教授職が多く、教授職までさらに長い道のりが続きます。私の場合は幸運にも北大が計算化学の分野に投資するという意味もあり、比較的早い段階で現在のポストを用意してくれたと感じていますが、教授職までのキャリアパスを描けるテニュアトラックも必要と思います。

2021年1月取材